Angel Beats!大ヒット記念企画 〜岸と麻枝の「俺たちが講演してやんよ」〜 レポ
11月21日に京都大学11月祭で京都大学アニメーション同好会によって行われたAngel Beats!大ヒット記念企画 〜岸と麻枝の「俺たちが講演してやんよ」〜。
このトークイベントに参加してきましたのでレポを書こうと思います。
京大までのバスが混んでいたのと、京大内で迷ってしまったため、会場には開場時刻の13:00ギリギリに到着。その時点で既に当日券の列にパッと見100人ほど並んでいるように見えました。
そして開場開始。完全に参加者が入場し終えたのが14:10分ほどで予定より少し遅れていました。自分は早い時間に入場したので詳しいことは分からないですがもしかしたら当日組が予想より多くて対応に時間がかかったのでしょうか。
講演開始。まずは京都大学アニメーション同好会の司会役の学生とアニプレックスの高橋祐馬氏が登場。麻枝さんと岸監督の準備がまだできていないとの事でそれまでの間お二方による前説が始まりました。
※以降、麻枝准氏の発言は麻「」、岸誠二監督の発言は岸「」、高橋祐馬氏の発言はゆ「」、学生の発言を学「」、質問をQ：とします。
また、これらは実際に本人達が発言した事をそのまま書いているのではなく言い換えてまとめている事、まとめやすいように発言順序等を少し変更している事をご了承ください。
見やすいようにQ&A方式でまとめましたが、実際はこんなに区切られた流れではなく、話の流れでゆま氏が掘り下げていったような感じでした。
ゆ「なぜAngel Beats!を選んだのか？」
学「面白い作品だったから」
ゆ「この中で京大生の人挙手」
体感的に4〜5割くらいの人が手を挙げてました。予想以上に多くてビックリ。
ゆ「遠くから来た人はどこから来たか教えて」
富山や栃木、また遠くはないですが奈良から徒歩で来たという人がいました。
ゆ「今回の目標は早稲田超え」*1
ここで麻枝准氏と岸誠二監督が入場。アニプレックス鳥羽Pも一番前の席に着席（発言はほとんどなかった）。
Q：Angel Beats!制作の経緯は？
麻「鳥羽Pにオファーを受けた。もうネタがないので断ろうかと思ったけど鳥羽Pの熱意に負けた」
岸「PAの社長*3にオファーを受けた。最初はコメディだと聞いていたけど蓋を開けてみて驚いた」
Q：もしオファーがなかったら？
麻「VAにも貢献したしもう食い扶持は稼いだので、あとは気ままな余生を過ごそうと思った。別の分野に挑戦したりバンドしたり」
Q：アニメとゲームの違い
麻「Keyは元々ONEでヒットしているチームなので好き勝手にやらせようという馬場社長の考えがあった。なので全てが自己責任。後で入ってきた人にも自己責任で好き勝手やらせてる。対してアニメだと止める人がいる」
岸「自分は止めてない」
麻「鳥羽さんによく止められました」
Q：イラッとした事
麻「物語が静かすぎるので戦闘シーンを入れようと思ったら鳥羽さんに「こういうのは違うのでやめてくれ」と言われた」
Q：1話について。どう落とし込むか
岸「素直に真っ向勝負」
Q：監督とはどういうものか
岸「文句をつける役」
岸「例えると船の船長のようなもの。麻枝さんが宝の地図を持ってきて、船のオーナーの鳥羽Pから宝島に行ってくれと頼まれ、クルーに指示を出して船を操作する」
ゆ「ONE PIECEみたい」
ゆ「PAは岸さんに（いい意味で）レイプされたと言われてますｗ」
Q：Angel Beats!でのこだわり
麻「続きが気になるように作った」
岸「文字だけの次回予告もその意図」
麻「あの次回予告を見て、ああいうやり方もあるんだと関心した」
岸「TVらしくというのは意識した」
続きが気になるように、TVらしく、というのは、この後の会話でも随所に出てきたので、本当にそこにこだわってたんだなぁと思いました。
麻（たぶん）「（言い間違えて）17・・・14話はいつ？」
鳥羽P「明日か明後日（11月22、23日）には」
【追記】22日にAngel Beats!公式サイトで14話の予告ムービーが公開されました。
Q：OP曲（My Soul, Your Beats!）に関して
麻「難航した。アレンジ次第で平凡すぎたりエキセントリックになったり・・・。ミニマルミュージックというアレンジでやってるけどこれカラオケで歌えないんじゃないかと」
岸「絵コンテだと頭のほうが中々出てこないけど曲もそうなの？」
麻「サビから作ってそこにAメロ等をくっつけてたが、TVサイズの尺に合わせるのが苦労した。イントロのピアノは苦し紛れにつけた。アレンジャーさんにはバレバレだった」
岸「そのお陰でピアノを弾かせる流れができた」
麻「歌が入る前に一拍抜くことで1秒ほど時間を削ったりした。サビでドカーンとなるようにアレンジャーに発注した」
Q：OPの設計について
岸「ピアノを弾かせる事になって、誰に弾かせるかと思ったけどかなでしかいないだろう、と」
麻「無茶なスケジュールでしたよね」
岸「ピアノを弾かせたいと言ったら「死んで」と言われた。ピアノの収録は放送2ヶ月前」
岸「OPのキャラの増減やダイジェストは飽きさせないようにするため」
Q：EDについて
麻「ED曲は結構簡単にできた。Aメロは（コードが）Let It Be進行。このAメロは6〜7年前からあって今回サビをつけた」
麻「EDに限らず全体的にANANTさん*4には苦労をかけた」
岸「OPはかなででEDはゆり。OPで負担をかけてEDでもかけたら・・・と思ったのでEDは楽な感じに」
岸「高松が脱いだりしたのはEDでも飽きさせないようにしたかったため。反応がないのが一番辛いので「高松ｗｗｗ」みたいな反応は楽しい」
Q：PAワークスだからできたこと
岸「若いからこそついてこれた。ベテランだと断られただろう」
ゆ「社長の堀川さんは？」
岸「麻枝君が堀川さんをよく弄ってるので堀川さんは麻枝君を気に入ってる」
麻「人間的に正反対なので反応が気になる」
Q：製作中に印象に残ったこと
麻「打ち入り。声優さんがたくさんいるのが印象的。ゲーム製作ではこういうのはない」
Q：絵コンテについて
麻「自分の脚本がそのまま使われるわけではない。絵コンテの段階で結構変わる」
岸「元々の脚本を100として、それを削るのではなく100から120にしようとした」
麻「11話は削られてますよね」
岸「話を入れるためにOPを飛ばしすぎて怒られた」
麻「声優さんの台本は絵コンテから作られてて、脚本から変わってる」
岸「変えたのは絵コンテじゃなくて自分」
麻「あなたでしたか。じゃあ8話のかなでの分身（の性格）が悪くなってるのも・・・」
岸「本編ではなくしましたが、かなでの分身が「もがき苦しめ」と言うような場面もありました」
麻「かなでは元々悪い子じゃないので分身してもそれは変わらない」
岸「あれはダークな部分」
麻「かなではそういうキャラじゃない。あなたとはもう2度と仕事をしないかもしれない」
Q：3話（EPISODE.03 My Song）について
麻「遊佐がゆっさゆさしてるのは脚本にはなかった。教師の足を引っ掛けるシーンも。あれは絵コンテがやった」
岸「教師を止める役が必要だったので発注した」
麻「あなただったんですね！ありがとうございます」
岸「少し前の発言（もう2度と仕事を〜）はｗ」
Q：9話（EPISODE.09 In Your Memory）について
麻「堀川さんが人が死んでる所を書きたくないと言ってたがAパート終了時に死んでた」
岸「あおきさん*5は監督もやっているので打ち合わせは監督対監督だった。一回やってみようという事で入れた。死ぬのはあおきさんの考え。緊張感を出そうと」
麻「堀川さんは2話の藤巻水死シーンも拒否してましたよね。でもその時期に見たCANAAN*6では人殺しまくってたｗ」
Q：コメディやギャグについて
麻「泣きは譲るがギャグは譲らない」
岸「5話はシナリオ段階からギャグ（椅子が飛ぶやつ）があった」
麻「スロー再生はなかった。あそこの日向の「グモー」っていう声がすごく面白かったんだけど音響の飯田さんが抜いて面白くなくなったので入れてくれと頼んだ。あの音は実際の日向の声ではなく音響効果」
Q：シリアスとコメディの両立
麻「これはうちがパイオニアなのでいつも通りにした」
岸「これもTV的ですよね。10話はAパートにギャグ、Bパートにシリアスを持ってきて」
麻「10話はまさしくKey」
岸「それを崩さないように気をつかった」
Q：事前募集のアンケート「1番好きなエピソードは？」
学「発表の前にお二人の好きなエピソードは？」
麻「10話」岸「9話」
- アンケート結果
順位 エピソード 票数 1位 EPISODE.10 Goodbye Days 157票 2位 EPISODE.13 Graduation 96票 3位 EPISODE.03 My Song 82票 4位 EPISODE.09 In Your Memory 47票 5位 EPISODE.04 Day Game 41票 5位 EPISODE.05 Favorite Flavor 41票 7位 EPISODE.12 Knockin' on heaven's door 33票 8位 EPISODE.01 Departure 26票 9位 EPISODE.06 Family Affair 24票 10位 EPISODE.07 Alive 23票 11位 EPISODE.08 Dancer in the Dark 14票 12位 EPISODE.02 Guild 13票 12位 EPISODE.11 Change the World 13票 学「この結果について感想は」
岸「この通りだと思う」
ここからランキング順に話を追う流れに
Q:10話について
麻「10話最後のモノローグはTV放映では一部だけですがDVD・BDでは尺をたくさん使ってます」
Q:13話について
岸「13話のかなでが消える時の音無がいろいろ言われてるけど、パニックになってるんだからあれでいいんです」
麻「Twitterを見ていて、最初は酷評だったのが、それを聞いた人がアニメを見て「いいじゃん」という流れになってる」
麻「Twitterで「麻枝ー見てるかー？」と書くのはやめて」
岸「13話は音無の人間性が好き」
ゆ「かなで役の花澤香菜さんがシンガポールでのイベント*7でたくさんの（花澤さんが出演している）作品の中から13話ラストの生アフレコをやったんですが皆大号泣してたみたいです」
麻「（直井役の）緒方さんがラジオ*8でカナダでCrow Songを歌った時にコールアンドレスポンスが完璧だったと言ってました」
Q:3話について
麻「岩沢が魅力的に描かれるとは思っていなかった。Na-Gaさんのキャラデザではモブ的だったので」
岸「飯田さんが推そうぜと」
麻「オレ的に岩沢は捨て駒。本命はユイ」
岸「（岩沢役の）沢城みゆきさんが良かった」
麻「沢城さんがG'sで「もっと出たかった」と書いてたのが・・・」
岸「桜は散るから美しい」
Q:9話について
麻「7話はKey的にベタで、病弱な人を連れだして死ぬという」
岸「そこからもう１つ進めたのが9話」
麻「それまでの2週間の反応が怖かった」
Q:4話,5話について
麻「この順位は嬉しい」
Q:他の順位について
岸「11話は大苦戦した。OPEDなしで3分オーバーしてた。元々普通のEDから各キャラの決意のシーンを入れる予定だった」
麻「決意のシーンは皆一人ぼっちだけど大丈夫？影にやられない？ｗ」
岸「あそこは皆が次の人生について決意するシーン。本当はもっと長かった」
麻「竹山のブログの文章は自分が作った。あとはかなでのPCのパスワードも。あれは"who's donor"です」
岸「大山は放送されたシーンの前に、机にいろいろ書かれてるのを見て、でももう1度人生やろうかなと決意するシーンがあった」
岸「野田はゆりに対しての気持ちのセリフがあった」
麻「12話で椎名が犬を連れてきてたのが・・・」
岸「あれは11話で犬に一度別れを告げたけど帰ってくるというシーンがあった」
麻「知らないですよ！それ未練ありまくりじゃないですかｗ」
10話がダントツで1位だったのは個人的に意外でした。ちなみに自分は5話に投票しました。
Q:BD7巻の特典（14話）について
岸「14話（特別編）のタイトルはStairway to Heavenです」
麻「タイトルは全部音楽関係から取ってきてて、これはレッド・ツェッペリンの楽曲からですね。シナリオそのままなので」
麻「よく14話を作る気になったなと思う」
岸「13話までの分が蓄積されてるので。こういうのはスタッフ的には有り難い事。」
ゆ「1〜13話までの話の中だとどれに似てる？」
麻「4話と5話ですね。14話は4.5話ですから。時間軸的にも」
ゆ「そろそろ質問に答えるコーナーに・・・」
（ここで唐突に）麻「Angel Beats!ゲーム化します」
麻「麻枝准辞める辞める詐欺とか言われてるが・・・。ABは空っぽの状態から鳥羽さんに引っ張ってもらってできた話で、ここで終わるのは勿体無い。全キャラの過去話を書く（書きたいだったかも）」
岸「TKがどうなるか楽しみｗ」
麻「先週から書き始めた。単なるノベルゲームではないよう頑張る」
岸「やっぱり勿体無いよね」
ゆ「一番びっくりしたのは自分。今知った」
麻「岩沢が消えないルートも・・・」
最初は麻枝さんがネタで言ってるのかと思いました。それくらい（あの場でゲーム化発表する事が）予想外で唐突でした。
ここからは事前に募集していた質問のコーナーに。
Q:影響を受けた作品は？
麻「ベーシックマガジンのファンタジー通信コーナー。栗本薫とか。あとは村上春樹の「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」です」
岸「ジャンルに限らずあらゆる所から影響を受けていますね」
Q:京大について
麻「京大生はどれくらいいます？」
上記の通り4〜5割程
麻「多いですね。早稲田はほとんどいなかった」
岸「京大は品があるよね」
麻「今日は（時間が）押して入ったので見まわっていない。15分前入り。トイレがバリアフリーで驚いた」
ゆ「京大はまず岸監督にオファーがあって、そこから麻枝さんに行った。早稲田はまずVAにオファーがあった」
岸「ビックリした」
麻「オファーを受けるか迷っていたけど、馬場社長の推しで出る事に決めた」
後でとある方に話を聞いて知ったんですけど、早稲田の講演タイトルは「麻枝と岸」になっていて、京大は逆に「岸と麻枝」になってるんですよね。ちゃんとオファーの順番が考慮されているという。
Q:シナリオライターに必要な事とは？
麻「一番売れた作品のレビューを調べまくる事。自分がいいと思う物を作るのは芸術家であってクリエイターではない。お客さんの反応が大事」
ゆ「それをどうアウトプットするのか？」
麻「（クリエイターとして）やっちゃいけない事がわかる。自分は平均点がとれないのでそれ前提でレビューを受け入れるのは大切。自分の味は嫌でも出る」
まとめ
ゆ「早稲田超えがテーマでしたが楽しんでいただけたでしょうか？」
会場拍手
麻「Twitterで麻枝准好きと書いていながら某軽音楽アニメにハマっている人とかもいて、そういう人達のAB熱を再燃させたい」
最後の挨拶
岸「500人強も集まっていただきありがとうございました」
麻「ロボットなしのオリジナルアニメとしてはABは大成功しているので、アニメはアニメで好きな方はありがとうございます。そうでなく、裏切ってしまったような古参のファンに対してはゲームで楽しませたい。ABは自分のライフワーク。生きる目標が見つかった。ゲームでもお付き合いしてくれれば嬉しい。ありがとうございました」
麻枝さんと岸監督がガッチリと握手。その後抱擁。
そして麻枝さん、岸監督、ゆま氏、鳥羽さんが退場。講演終了。
とりあえず自分の覚えてる限りを書きました。
もし講演に参加された方で、ここは違うとかあれが抜けてるとかがあれば報告して頂けると有り難いです。（一部意図的に抜いてる部分はあります。参加された方ならわかるはず）
やっぱり一番衝撃的だったのはゲーム化発表で、その辺に関する自分の考えは後日また書こうと考えています。
イベントは本当に楽しくて、これを読んでくれた方に少しでもその楽しさが伝わればいいなと思います。麻枝さん岸監督等は勿論の事、イベント運営関連の方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
※ゲーム化について、VAの馬場社長がTwitterでこのようなツイートをしていらっしゃいます。なのでゲーム化はまだ確定ではないという事みたいです。
Tweet
*1:麻枝准＆岸誠二トークイベント in Waseda 〜Way to[from] Angel Beats!〜
*2:山本寛。2011年に放送されるTVアニメ「フラクタル」の監督として注目を浴びている。
*3:P.A. Worksの代表取締役の堀川憲司氏
*4:ANANT-GARDE EYES。編曲家。
*7:シンガポールで日本アニメのビジネスフォーラム今年も開催 http://www.animeanime.biz/all/2010110704/
*8:NHK-FM とことんアニソン大辞典 http://www.nhk.or.jp/tokoton/
