Hot MealとThousand Enemies

TVアニメ「Angel Beats!*1での劇中バンド「Girls Dead Monster*2のマキシシングル"Last Song"と"一番の宝物 〜Yui final ver.〜"が12月8日に発売されました。
「ガルデモラストプロジェクト」と銘打たれた*3これらのシングル、今回は"Last Song"内に収録されている"Hot Meal"という曲の歌詞について簡単な感想・考察を書いていこうと思います。
Angel Beats!本編のネタバレがあります。

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既に知ってる方も多いとは思いますが、この"Hot Meal"という曲は、第5話の挿入歌でガルデモの2ndシングルに収録されている"Thousand Enemies"と同じメロディ、でも歌詞が違う、という曲になっています。
Thousand Enemies

Thousand Enemies

その理由としては、AB本編第5話で"Thousand Enemies"は岩沢が消える前に残した曲で、その歌詞をユイが担当したというふうに説明されているんですが、"Hot Meal"は「もし岩沢が作詞もしたら・・・」という思いで作られた曲*4であるため、メロディは同じでも歌詞が違う、というようになっています。
このような立ち位置の2曲について、今回は岩沢とユイがそれぞれどのように作曲したのかというのをこれら2曲を比較しながら考えたいと思います。

この歌詞の登場人物は「あたし」と「君」の2人。AB本編を全話見た現在だとユイと日向にしか思えないので今回はその2人だと仮定します。
今回の主題は"Hot Meal"についてなので"Thousand Enemies"についてはこの部分だけ考えたいと思います。

行く手には 数えきれない
敵がいてあたしを待ってる 君にも待ってる

タイトル"Thousand Enemies"のEnemies、「敵」というのはこの部分に出てきます。では「敵」というのは何か?という事ですが、ユイの生前について描かれた第10話を見ればわかるかと思います。
つまり「敵」とはユイが抱えていた寝たきりになるほどの障害であり、「君にも待ってる」というのはそんなユイと結婚する日向にも今後ずっとその障害がつきまとう、ということだと自分は思いました。
そんな障害があっても、それでもユイと結婚すると言い切った日向に満足してユイは死後の世界から消えました、というのが10話のおはなし。
"Thousand Enemies"とは、ユイの持つ障害を「敵」と例え、それを恋人と一緒に乗り越えたいというユイの願望を描いているんだと思います。

  • "Hot Meal"と"岩沢"

この曲は本編第3話で描かれた岩沢の生前について語られているように見えます。
岩沢の家庭は両親の夫婦喧嘩が絶えず、Hot Meal(温かい食事)なんていうものとは正反対の家庭環境でした。歌詞にも「冷たい部屋」や「華やいだ夕飯を斜に見ていた」というのがあり、岩沢の家庭環境の厳しさが伺えます。
そんな環境の中岩沢は音楽に出会いそれに救われ、自分も歌い始め、音楽に生きていく事を決心しました。しかし結局それは叶わず、両親の喧嘩のせいで入院、死亡、死後の世界へ、というのが岩沢の生前でした。
岩沢が音楽に救われ、自分も歌うことで誰かを救おうという気持ちがHot Mealの歌詞全体から見えます。特に

きっと先にあたしだけに救えるものが
あるはずと 歌っている
その思いがあたしを強くする 無敵に変える

という部分でそれが強く出ているかと思います。
その気持ちを考えると、後半の、

迷った時にはまたこの場所へ戻ってくればいいよ
あたしはいつでも歌ってるから飛び先もわからずに

さあさおかえりきみはもう大丈夫

温かな夕飯が迎えてくれる
そういうこと気づかずに生きてきたんでしょ?
お腹いっぱい食べたらもう忘れたらいいよ

というのは、「迷った時」=複雑な環境で悩んでいる時、「この場所」=岩沢のライブ会場、「温かな夕飯」=岩沢の歌、「お腹いっぱい食べたらもう忘れたらいいよ」=歌を聞いて悩みなんて忘れたらいい、と解釈できます。
つまり"Hot Meal"は、岩沢が歌う理由、願望を温かな夕飯に例えて描いてるんだと思います。

  • 共通点

上記に示した通り、"Hot Meal"も"Thousand Enemies"も、岩沢やユイが生前にあった願望、しかし生前には達成できなかった事、そして死後の世界で達成した事を歌詞にしています。
この2曲に共通するメロディは岩沢が消える直前に作曲したもの。もしかしたら岩沢はこの曲を作曲している時点で既に自分の人生に満足しかけていた(=死後の世界から消える条件をほぼ満たしていた)のかもしれないですね。